よむフェス #6「フェスは消費財か?」
Illustration : SEIGOFUKUDA
この「よむフェス」では、ファッション、自然回帰マインド、スピリチュアル、野外PA、そしてタイコクラブの裏側をテーマにコラムを書いてきた。最終回は野外フェスの未来について考えてみる。
ファッションの通販サイトを覗いた時のことだ。アウトドアウェアの商品キャプション欄を見ると、「いまや社会現象とも呼べる野外フェス……」という文言が躍っていた。
現代フェスが社会現象と呼べるほど巨大なマーケット~文化フォーマットであるかどうかは判断のわかれるところだろうが、いまや「フェス」という単語が日常会話で使われることは珍しくないわけで、この意味ではフェスは現代消費社会の一部に組み込まれていると言えるだろう。
だが、それはフェスというものが消費財になったということを示唆することでもある。「たまごっち」「エアジョーダン」「渋谷系」「クロックスのサンダル」などと同じようにフェスは消費され、いまから10年後には「あった、あった。フェス!」という扱いをされてしまうのだろうか。
現状確認を行っておこう。
まず、これだけ取り沙汰されていながらマーケットとしての野外フェスは頭打ちに達している感が強い。
『ぴあライブ・エンタテインメント白書2009』(ぴあ総合研究所)には、00年から08年までのフェス市場規模推移が掲載されている。
http://www.amazon.co.jp/dp/4835617444
(more…)
Home|Contents| News| 岡本俊浩「よむフェス」
2010-8-30th Up
よむフェス #5「なぜスピリチュアル?」
Illustration : SEIGOFUKUDA
野外フェス空間を歩いていると、しばしば僕らは「スピリチュアル」な事象に出会う。
例えば会場の近くに「パワースポット」があれば、ご利益にあやかりたいといってみんなで出かけることはごくフツーのことだ。有名パワースポットの岐阜県・養老天命反転地は過去に野外フェスの会場として使われた。
今年の8月に、神奈川県相模原市旧藤野町で行われた「ひかり祭り」は、エコロジーの観点から里山の長屋をシェアする試みをアナウンスする一面を持つ一方、スピリチュアルをいたるところにまとっていた。
マーケットエリアの一角では、「ZENタロット」の売り文句で若い男子が占いブースを出していた。それにしても普通のタロットではなく、なぜZENなのか。占い男子の名前なのか、あるいは禅の概念を取り入れたものなのか……それはさておき、彼の店は3名の女子に囲まれる繁盛ぶりだった。その斜向かいでは、「旧暦は地球を救う」と書かれたブースが出ていた。旧暦とは地球、太陽、月の位置関係や満ち欠けを元にした「宇宙暦」を表すらしい。
別の一角では、『生命の誕生と浄化の日まで』と名づけられたミニコミ誌が売られていた。これはアメリカインディアンの指導者による現代文明に対する戒めから予言が書かれた本で、翻訳者を北山耕平が務めている。
科学万能主義、効率最優先主義があるいま、この手の文化はしばしば「ウサン臭いもの」「現実を直視していない」として批判の対象になる。
誤解のないように言っておきたいが、何も僕はスピリチュアルが正しいとか間違っているとか、そういう話をしたいのではない。いまなぜ、スピリチュアルなのかと、考えてみたい。ただそれだけなのである。
(more…)
Home|Contents| News| 岡本俊浩「よむフェス」
2010-8-18th Up
よむフェス #4「雑誌『ブルータス』に見る自然回帰マインド」
Illustration : SEIGOFUKUDA
雑誌『ブルータス』の8月1日号(690号)は、映画『借りぐらしのアリエッティ』に関連したスタジオジブリ特集だった。しかし、きょうのテーマは宮崎アニメではない。雑誌の一番後ろに「ミスター・クサカベ」というタイトルのファッショングラビアが掲載されている。合計4ページに渡るページだ。
http://magazineworld.jp/brutus/690/
撮影はRintaro Ishige。モデルを務める黒縁メガネのミスター・クサカベは明治時代の文学青年のようだ。そんなクサカベさんは、「ポロ・ラルフ・ローレン」や「トム・ブラウン」などのアメトラ(アメリカントラッド)系ブランドのウェアをまとって日本の原風景の中にたたずんでいる。パジャマ姿で朽ち果てた廃屋の前にぼーっとたたずむクサカベさん、お寺で古書を読み耽るクサカベさん、秋の色に染まった里山を背景にレトロな自転車を押し歩くクサカベさん。データの加工で絵画のような風合いに仕上がったグラビアは、明治~大正時代に日本人洋画家が描いた日本の田園風景を思い起こさせる代物だ。
それにしても、こういうグラビアが「いいよね」と編集者とカメラマンの間で合意形成される空気って何なのだろうかと思う。しかもブルータスで。クサしているのではなくて、純粋に興味津々なのである。
30代~40代の都市生活者をメイン読者層とするブルータスは、昨年の656号でカリスマデザイナー佐藤可士和(とその妻+仲間)を表紙に据えた農業特集「みんなで農業。」、今年の683号では森(と森っぽい空間)を扱った特集「森に還る」をやっているから、同誌が自然やエコをテーマに据えるのは不思議ではないのだが、数ある企画の中でも「ミスター・クサカベ」は、品のいいライフスタイル提案を振り切った異質なものを感じさせるのだ。こういうページを見るにつけ、はたと思う。
「ホントに自然回帰したいと思っているのか」
(more…)
Home|Contents| News| 岡本俊浩「よむフェス」
2010-8-9th Up
よむフェス #3「浅田泰さん 野外フェスのPAに込められたプロ精神」
Illustration : SEIGOFUKUDA
書籍『野外フェスのつくり方』(フィルムアート社)は2つのキャラクターを持っている。
ひとつは現代フェスの文化評論的な側面だ。2つめはノウハウ的側面から見たフェスのつくり方だ。
実際フェスにやるとなると、仕事は数限りなく発生するだろう。トイレ問題、ゴミ問題……中でも重要なのは音響関係だ。せっかくお気に入りのミュージシャンを招いても、出る音がダメなら話にならないし、野外でサウンドシステムを稼働させるのは、実はリスクと隣り合わせなのだ。
考えてもみれば当たり前の話である。基本的にサウンドシステムは電気製品。野外で鳴らす前提では作られていない。
「雨が降ってもフツーに動いているじゃん」
と思っているそこのアナタ。世の中そんなに甘くありません。
雨が降ろうが風が吹こうが、淀みなくサウンドシステムが稼働するのはそこにプロの「ワザ」があるからに他ならない。
『野外フェスのつくり方』では、キャリア約30年を誇る浅田泰(あさだ・ゆたか)さんのワザに迫っている。プロにとって自らの仕事術は貴重極まりない情報だが、ライター山口浩司くんの取材に対し、浅田さんは惜しげもなく「野外PAのノウハウ」を開示してくれた。
過酷な野外環境でサウンドシステムをセーフティに稼働させるには何が必要か。例えばスピーカーの中心部にはコーンと呼ばれるでっぱりがある。これは紙できている。限度を超えて水に濡れればダメになるし、一回ダメになったら強度は二度と再生しない。それを防ぐためにはどうやってサウンドシステムを動かすのがよいか?
……これ以上書くと紙数が尽きてしまうのでここまでにしておくが、読んでいるだけで機材オンチの僕ですら即席エンジニアになれるのではないか、というぐらいに理路整然とした説明がされている。
(more…)
Home|Contents| News| 岡本俊浩「よむフェス」
2010-8-2nd Up
よむフェス #2「フェスの若者はなぜお洒落なのか」
Illustration : SEIGOFUKUDA
ファッション雑誌の定番企画といえば着こなしスナップだ。海外セレブだったり、表参道を歩くアラフォー女性だったり……対象は雑誌のキャラによって千差万別なわけだが、いまストリートファッション誌では「野外フェス」が主要な撮影現場に名を連ねているのをご存じだろうか。
アウトドア女子のファッションスナップをひたすら掲載し続ける『OFガール』(学研パブリッシング)はそのひとつである。
http://www.amazon.co.jp/dp/4056059772/
誌面を開くと、野外フェス「スプリング・ラヴ~春風」(4月・代々木公園開催)を訪れたオーディエンス(主に20代の女子)が飛びこんでくる。彼女たちはカラフルな色使い、こなれた重ね着テクニックを駆使して、フェス空間を軽やかに闊歩している。
「若い子はお金がない」
とはよく言われる。
だが、プロフィール欄に書かれたコーディネイト総額は2万円から4万円が多い。バックパックやランタン、野外で必要なギアを揃えていったら「10万円は使っていました」という若者も珍しくないだろう。この意味で現代のフェスは祝祭空間であると同時に、立派な消費空間であるとも言えるのだ。
異論が出るかもしれない。野外フェスという文化領域が消費活動に取り込まれてよいのかと。
(more…)
Home|Contents| News| 岡本俊浩「よむフェス」
2010-7-23rd Up
よむフェス #1「タイコクラブのつくり方」
こんにちは。ライターの岡本俊浩です。実はこの夏、『野外フェスのつくり方』(フィルムアート社)という本を出すことになりました。大小様々なフェスに取材をかけた中でこのタイコクラブにもみっちりお話を聞かせてもらった。そんな縁もあって、今回からタイコクラブの軒先をお借りして期間限定のコラム連載を始めることになりました。よろしくお願いします。
さて、第一回はタイコクラブのつくり方と題し、会場として馴染み深い長野県木曽郡「こだまの森」とのエピソードを書いてみよう。
僕がタイコクラブに初めて足を運んだのは4年前。
来るたびにこだまの森の環境は恵まれていると感じる。ここから眺める山々の緑はいつも深く、そばには里山的な風景も広がっている。何よりも高台にある野外音楽堂の音響効果は様々な会場で体験してきた中でも群を抜いて素晴らしいのだが、ステージ前に広がるすり鉢状の地形がその秘密だ。ここは音が底にたまるようにできている。これがコンクリートなら音の反射が厳しくて耳が疲れてしまうが、土の地面がやわらかく音を吸収してくれる。
そんな理由から、こだまの森は90年代から野外レイヴの名所として親しまれてきた。ここでは何度かトランス系レイヴが開催されてきたのだ。
知人のデザイナー「I」が15年前、いや10数年前だったか、ここを訪れた。一昨年に彼はタイコクラブの会場でそのことを話してくれたのだった。
(more…)
Home|Contents| News| 岡本俊浩「よむフェス」
2010-7-20th Up