タイコクラブ | Hallo Berlin! #9 – Pat Metheny’s “Orchestrion” @ Berlin Philharmonie 

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Hallo Berlin! #9 – Pat Metheny’s “Orchestrion” @ Berlin Philharmonie

もうこちらでは数ヶ月前のことになるのですが、観に行ったコンサートのことを書きたいと思います。これまで様々なライブ/コンサートを観てきましたが、これは生涯ベスト5入りはしそうな、ちょっと他のものとは比較できないくらい素晴らしいものでした。

何が素晴らしいかったかといえば、理由は色々あります。

まずプレイヤー。パット・メセニーといえば、説明不要なアメリカを代表するジャズ/フュージョンの天才ギタリスト。あらゆる音楽ファンから愛される作曲家であり、ミュージシャンです。だから「パット・メセニーがギターを弾く」というだけでとんでもなく素晴らしい音楽が奏でられることは間違いがなく、いわばそれは想定内でした。

しかし今回は、単なるパット・メセニー、またはパット・メセニー・グループのコンサートではありません。パット・メセニーの「オーケストリオン」のコンサートだったんです。「オーケストリオン」は彼が今年1月に発表した新作のタイトルにもなっていますが、彼が開発した自動演奏装置の名称です。どういうものかというと…… このビデオをご覧頂くのが一番分かりやすいでしょう!

いや、見ても分かりませんね!ぶっちゃけ、どういう仕組みになっているのかは、私も全然分かりません!ただ、この様々な楽器を組み合わせた装置は、パット・メセニーたった一人によって演奏されているということ。彼が演奏するギターや、足下にたくさん置かれたベダルの操作に反応して、それ以外の楽器が自動的に演奏されるようになってるらしいんです。発案はパットさん本人。完全にカスタムメイド。おそらく、完全に理解しているのは彼一人か他に数人しかいないんじゃないかと思われます。もちろん、これを演奏しこなせるのはパットさんだけ!

このビデオを見てビックリした私は、さっそくどこかでこれを実際に見れないものかとググりました。するとベルリンにやって来ることが判明。しかも会場がPhilharmonie!

そう、このコンサートがヤバかったもう一つの理由はこの会場。その名称でお察しの通り、あの世界最高峰のオーケストラと言われるベルリン・フィルハーモニーのホームグラウンドでございます。ベルリン・フィルもベルリンいる間にぜひ体験せねばならぬものだと思っておりましたが、この最高の会場で謎の自動演奏装置がパット・メセニーによって演奏されるとなれば、好奇心をくすぐられないわけがありません。

チケットの価格は確か50ユーロ程度だったんですが、ビンボー人の多いベルリンでは数人の友人を誘ってみたものの「高い」とか言って同伴者見つけられず…… 仕方ないので一人で参戦!(ちなみに、後になって「えー、そんなのあったの!?行きたかったー!!」という人が続出。遅いっつーの!)


オンラインでチケットを買ったんですが、ギリギリのタイミングだったのでステージ脇の席になってしまいました。ステージにすごく近い2階席なんだけど、真横。これはさすがに最高峰の音響を誇るホールでもどうかな……?なんてナメて会場入り。

するとステージ上のセットに布が被せてあって、私の席からはナーンにも見えない!!

パットさん登場するも1ミリも見えない!!

これはマズいぞ、と思いなるべく見えそうな空いてる席に移動。次々と移動する周囲の人々。こういうときに係員の人も別に何も言わないのがいいところ。空いてるんだから、見える方に移動すれば?という感じ。2曲ほどアコースティック・ギターのみのソロ演奏があり、パットさんの素敵な演奏に感動。そう、「見えない!」ことに焦っていましたが、実は音は完璧!ステージ真横なのに全くそんな感じがしない、完璧なバランス。こ、これが最強のコンサート・ホールというやつなんですね!ジリジリと中央の方に移動しながら2曲を聴き終えると、いきなりバサッと布が取り払われ、巨大装置登場!布がなくなったら、視界を遮るものはあまりなく、フツーに見えたというオチでした(笑)。

パットさん本人もよく見えるようになったし、演奏は完璧だし、音は最高に美しい。最初はキョロキョロと巨大装置を観察したりもしていたんですが、だんだんとそんなことはどうでも良くなってしまいました!小一時間、アルバム『Orchestrion』の曲を中心に演奏した後、本人のMCが入りました。「このOrchestrionの構想のことを家族に初めて話したとき、これまで暖かく見守って来てくれた妻も『遂に完全に頭がイカれてしまった』という顔で私を見ました」と笑いながら告白。パットさん自身による解説と装置のデモンストレーションがあり、「ギターをこう弾きながらこのペダルを踏むと……」なんて言いながら色々やってみせてくれるんですが、お客さんの頭の上には大きな「?」マーク。「そうなんです、とても仕組みを説明するのは難しいんです。でもこれらの楽器はあらかじめ曲がプログラムされているのではなく、即興演奏にも反応して自動演奏するんです」と何曲かインプロヴィゼーションを披露。結局仕組みは理解しきれませんでしたが(笑)、とにかく即興曲なのにその美しいこと!実に惚れ惚れする演奏でした。


仕組みは分からずじまいでしたが、少なくとも分かるのはこの大量の楽器ひとつひとつの音を全てパットさんは把握しているということ。彼は「オーケストリオン」の指揮者であり、リード・プレイヤーでもあるわけです。楽器が鳴っている間、パットさんの手が止まることはありません。超人並みの音楽の理解能力(というのかな?)と超絶な演奏テクニックと集中力の全てが揃っていないと、これだけの仕組みであれだけ完成度の高い演奏は絶対に出来ません。んーーー、天才!しかも本人がとても楽しそうに、気持ち良さそうに弾いている!「あれだけ弾けたら気持ちいいんだろうな」と見てる方が羨ましくなるほど。

過去の名曲もいくつか挟みながら、結局2度のアンコールを経て、コンサートが終了したのは2時間半後でした。要所要所でMCが入りましたが、それ以外はほとんど一人で演奏しっぱなし。当然ダレたりブレたりする瞬間は皆無。凄すぎます…… これが超一流のミュージシャンというものか、と非常に感銘を受けました。

Berlin Philharmonieはピュアな音が完璧に聴こえてしまうホールなので、演奏の上手い下手が一瞬にしてバレると複数の人が言っていました。その分、上手い演奏の素晴らしさがどこよりも伝わるということなんだと思います。この体験をした後に行ったいくつかのコンサートは、比較するのが酷な話ですが、なんだかしらけてしまってマトモに聴けなかったほど。それほど音楽の最高の楽しみ方を教えてくれたコンサートでした。また観に行ける機会があったら、ぜひ行きたいです。

来月には日本公演もありますね。残念ながらチケットはソールドアウトのようなので、チケットを買えなかった方は、このレポートで少しでもイメージして頂けたらと思います。これから行くという方は、ぜひ、じっくりと楽しんで下さいね。

浅沼優子/Yuko Asanuma

主な仕事は音楽ライター/通訳/翻訳など。
インディペンデントなヒップホップやダンス・ミュージックを得意分野とし、「徹底現場主義」がポリシー。
おもし ろそうなライブやパーティーをひたすらチェックしつつ、日本の音楽誌、カルチャー誌、ファッション誌などで通訳やインタビュー原稿の執筆をやっています。
現場で鍛えた耳と足腰には自信アリ。拠点を東京からベルリンに移し、新生活を始めると共に現地の音楽事情をレポートしていきたいと思います!


2010-5-21st Up 



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